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カドヤ質店からのお知らせ

2025年6月のプラチナ相場レポート~供給不安と中国需要の回復が価格上昇を後押し~

2025.07.15

はじめに

2025年6月、プラチナ価格が大きく反発しました。国内の買取相場も5月から大幅に上昇しました。
その背景には、南アフリカの供給不安や中国の産業需要の回復といった明確な材料がありました。
今回は実際の相場データをもとに、6月の動きとその要因を振り返ります。

5月〜6月の価格推移と統計

田中貴金属の店頭買取価格は、5月1日時点で4,816円/gでした。5月末には5,418円/gと緩やかに上昇しました。
6月に入ってからは上昇ペースが加速しました。6月30日には6,800円/gまで達しています。

月ごとの統計値は以下の通りです。

  • 5月平均:5,149円/g(最高値 5,418円、最安値 4,816円)
  • 6月平均:6,194円/g(最高値 7,153円、最安値 5,253円)

📈 店頭買取価格の推移グラフ(5月〜6月)

このグラフを見ると、5月は月初から月末にかけてじわじわと安定した上昇を続けていたことがわかります。
特に5月下旬から6月上旬にかけて、連日小幅な上昇が続きました。
6月中旬以降には勾配が一気に急になり、日単位で200円以上の上昇が目立ちました。

相場の反発が静かに始まっていた5月、そこから6月で一気に加速した様子がグラフからも明確に読み取れます。

為替の影響とドル建て価格

プラチナ価格はドル建てで国際的に取引されます。そのため円相場の動きも無視できません。
6月の為替は比較的安定しており、月初の143円台から月末には144円台へと小幅に円安が進行しました。
そのため、為替の押し上げ効果は限定的でした。一方で、ドル建て価格の上昇が国内相場に大きく影響しました。

買取価格と為替レートから逆算したドル建て価格は、6月中おおむね1,140〜1,340ドル/oz付近で推移しています。
こちらも6月末にかけてやや上昇しています。
為替はほぼ横ばいでしたが、ドル建て価格の上昇が国内相場を押し上げました。

🌍 ドル建て価格(逆算値)の推移グラフ

上昇を支えた主な要因

プラチナ相場の反発には、短期的なトリガーだけでなく、より深い需給構造の変化も背景にあります。
特に注目すべきは「地上在庫の枯渇」という根本的な供給制約です。

世界白金投資評議会(WPIC)の報告で、2025年の年間供給不足は96万6,000トロイオンスと予測されています。
これは3年連続の不足となる見込みです。

さらに、世界全体の地上在庫はわずか216万トロイオンスまで減少しています。
これは約3カ月分の需要を満たす量に過ぎません。
こうした状況では、新たに採掘される供給が実需に追いつかず、価格上昇圧力が構造的にかかっているといえます。

1. 南アフリカの供給不安

世界のプラチナ供給の約7割を担う南アフリカ。
ここでは、主要鉱山会社によるコスト削減・操業停止の報道が6月に相次ぎました。
ブルームバーグの報道(6月26日)では、大手生産者が一部の採掘事業を停止する方針を明らかにしたとされています。

これをきっかけに供給懸念が一気に強まりました。
これまで市場で織り込まれていなかった情報が表面化したことが、急激な上昇のトリガーとなったと考えられます。

2. 中国の産業需要と構造的な下支え

中国では、自動車販売の回復や産業用途での需要増加が続いています。
特にハイブリッド車・ガソリン車では、排ガス規制に対応するためにプラチナを使った触媒が不可欠です。

電気自動車(EV)ではプラチナはほとんど使われません。
しかし、中国では依然としてHVや内燃機関車が販売の主流であり、この構造的な需要が底堅さを保っています。

ただし、これらはあくまで中長期的な背景です。
したがって、6月の急騰を直接的に説明するには弱い材料でもあります。
6月に入ってから相場が動いたのは、こうした需要の安定感がすでに市場に認識された状態で、他の要因が加わったからに他なりません。

3. 投資マネーとテクニカルな要因

5月までにプラチナ価格は5,000円台前半まで下落しており、過熱感が一服していました。
そこに加え、6月中旬以降は一部ファンドのポジション転換やETFを通じた買い戻しが観測されました。
このように、割安感を背景に投資マネーが流入しやすい地合いとなりました。

また、チャート上でも節目を上抜けたことが買いを誘発し、テクニカルな面からも上昇が加速したと見られます。

カドヤ質店からの視点と今後の注目点

カドヤ質店でも、6月後半からプラチナに関する査定のご相談が増えてきました。
「今売った方がいいのか?」「もう少し上がるのか?」といったお声も多く寄せられています。

今後の注目は、米FRBによる利下げ政策と、中国の景気回復が本格化するかどうかです。
また、南アフリカの電力事情など供給リスクもくすぶっており、相場は今後も変動の可能性を秘めています。

まとめ

2025年6月のプラチナ相場は、南アフリカの供給不安と中国の需要回復という明確な要因に加え、投資家による買い戻しが重なりました。
その結果、5月の安定的な上昇基調から一気に反発を強めました。
平均価格も6,000円台に乗り、国内市場でも関心が高まっていることが実感されます。

今後も国際情勢と為替動向に注意しながら、売却や保有の判断を行っていく必要がありそうです。

出典