MENU

カドヤ質店からのお知らせ

2025年8月プラチナ相場レポート|国際相場が主導した高値圏の推移

2025.09.12

はじめに

2025年8月のプラチナ相場は、月を通して6,900円前後での推移が中心となりました。
ただし月後半には一時的に7,000円を突破する場面もあり、方向感を探る展開が続きました。

このコラムでは、田中貴金属の店頭買取価格と為替データ(8/1〜8/29)を基に、円建て・ドル建ての推移を確認しながら、8月の値動きを生んだニュースや出来事を丁寧に読み解いていきます。

円建てプラチナ価格と為替の推移

8月の国内相場は、6,900円前後での推移が中心となりました。
最安値は8月20日の6,748円/g、最高値は8月25日の7,026円/gで、月間の上下幅は約280円に収まりました。
特に月後半には7,000円を一時的に突破する場面も見られ、堅調さを印象づける展開でした。

一方で、為替(ドル円)は146〜148円台での推移となりました。初旬に大きく円高へ推移しましたが、先月7月の為替推移と比較すると、相対的に落ち着いた動きだったといえます。

ドル建てプラチナ価格の推移

次に、海外市場でのドル建てプラチナ相場を見ていきます。
8月は1,290〜1,350ドル/ozのレンジでの推移が続きました。
最安値は8月20日の1,291ドル/oz、最高値は8月29日の1,346ドル/ozとなりました。月間の変動幅はおよそ55ドルにとどまりました。

グラフを円建てと比較すると、値動きの方向性はほとんど同じであることがわかります。
つまり8月は、為替(ドル円)が146〜148円台で落ち着いていたため、国内相場は為替の影響よりも、海外市場そのものの動きに強く連動していたと考えられます。

なお、同じ時期の金相場についても為替要因より国際相場の動きが主導しておりました。
その為、8月は貴金属市場全体が海外要因に敏感に反応した月だったと総括できます。

プラチナ相場に影響した8月のニュースまとめ

この章では、8月のプラチナ相場に影響を与えた金融政策や地政学要因、政権発言などを時系列で整理しながら、価格変動の背景を読み解いていきます。

📌 8月上旬:利下げ観測と関税リスクで上昇

8月7日に、FRB高官が利下げの可能性を示唆しました。これによりドル安観測が強まり、非金利資産である貴金属に資金が向かいました。

さらに同日、トランプ政権が一部の金地金に関税を発表。安全資産需要が刺激され、プラチナ相場は上昇しました。
しかし8月11日には、トランプ大統領自身がこの関税案を否定。材料が剥落したことで、相場はやや調整局面に入りました。

📌 8月中旬:地政学リスクと首脳会談の思惑

8月15日、トランプ大統領とプーチン大統領の会談が行われました。この結果、地政学リスクを意識した安全資産需要が高まり、プラチナ相場は上昇しました。

8月18日には、ゼレンスキー大統領とトランプ大統領、欧州首脳による会談が開催されました。この会談で米国のウクライナ安全保障への関与や首脳会談調整が示されました。しかし市場にはすでに織り込み済みだったため、影響は限定的でした。

📌 8月下旬:ジャクソンホールとFRB人事発言

その後8月22日には、ジャクソンホール会議でパウエルFRB議長が講演を行いました。発言内容は市場の想定以上にハト派的(=利下げに前向き)と受け止められました。利下げ観測が急速に強まり、ドル安が進行したことで、プラチナ相場は急伸しました。

8月26日には、トランプ大統領がFRB理事の解任を示唆。独立性への懸念が強まり、ドルと長期金利は下落しました。しかし不透明感が増したことで利益確定売りが入るなど、相場は調整しました。

このように8月は、利下げ観測の強弱やトランプ政権の発言、地政学リスクの変化といった短期的な材料が交錯し、上昇と調整が繰り返される展開となりました。

まとめ

2025年8月のプラチナ相場は、6,900円前後での推移が中心となり、月後半には一時的に7,000円台を回復する場面もありました。
為替(ドル円)が146〜148円台で落ち着いた動きを見せました。
一方で国内相場は為替よりも国際相場そのものの変動に強く連動する展開となりました。

背景には、FRB高官やパウエル議長による発言、トランプ大統領の関税政策やFRB人事への言及、さらにはウクライナ情勢や米露首脳会談など、金融政策と地政学要因が交錯した月であったことが挙げられます。

特にジャクソンホール会議でのハト派的な講演は利下げ観測を一気に強め、相場を押し上げる大きな材料となりました。
一方で、トランプ発言による不透明感から利益確定売りが入るなど、調整の場面もありました。

総じて8月のプラチナ相場は、国際市場の短期的な材料に敏感に反応しつつも、高値圏を維持した月といえるでしょう。
今後もFRBの政策動向や地政学情勢が、プラチナ相場にとって大きなカギとなりそうです。

出典

・田中貴金属工業「店頭買取価格」
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/

・Reuters「米経済指標・FRB発言・地政学関連ニュース(2025年8月)」
FRBパウエル議長ジャクソンホール講演(2025年8月22日)
トランプ前大統領によるFRB理事解任示唆(2025年8月26日)
米露首脳会談に関する報道(2025年8月15日)
ゼレンスキー大統領と米欧首脳会談(2025年8月18日)

・BullionVault「ニュースレター(2025年8月1日)」
BullionVaultニュースレター(2025年8月1日)米雇用統計悪化で利下げ観測強まり金上昇