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2025年7月金相場レポート|円安と世界情勢が交錯した1か月

2025.08.04

2025年7月の金相場は、月を通して高値圏での推移が続いたものの、その中には小さな波もあり、注目すべき局面がいくつか見られました。

このコラムでは、田中貴金属の店頭買取価格と為替データをもとに、
円建て・ドル建てそれぞれの動きを可視化しながら、相場の背景にあるニュースや出来事を解説していきます。

円建て金価格と為替の推移

7月の店頭金買取価格は、為替とともにじわじわと上昇傾向を見せました。
まずはその日別の動きと流れを、実際の価格から振り返ってみましょう。

7月1日の店頭買取価格は16,714円/gでスタートし、月末には17,274円/gと、およそ3%強の上昇を記録しました。
一時は23日・24日に17,683円/gまで達し、月内の最高値を更新しています。

一方、為替相場は月初の143.80円から月末には148.45円まで円安方向に進行しました。
これは約3.2%の円安となっております。

これらから、金価格の上昇には為替の影響も強く表れていたことがわかります。

ドル建て金価格から見る相場の本質

この章では、金の「国際的な価値」を見るために、
ドル建て金価格(1トロイオンスあたり)をもとに相場の実態を探っていきます。

7月のドル建て金価格は、月初の約3,615ドル/ozから始まり、
中旬には3,655ドル前後で推移し、月末にはやや下がって3,615ドル台に戻る展開となりました。
つまり、ドル建てで見ると7月の金価格はほぼ横ばい〜やや下落の傾向を示していたことになります。

この動きは、前章で確認した円建ての上昇とは対照的です。
その主な理由は、やはり為替の影響が大きかったことにあります。
つまり、7月の日本国内での金価格上昇は、「金の価値が上がった」というよりも「円の価値が下がった」ことによる部分が大きいのです。

金相場に影響した7月のニュースまとめ

この章では、7月の金相場に影響を与えたニュースを整理しながら、価格変動の背景を読み解いていきます。

📌 7月上旬:米国経済指標と利下げ観測の揺れ
・7月3日、米雇用統計が予想を上回る結果となり、利下げ期待が後退。
金相場は一時的に下落し、ドル建てで約3,329ドル/ozまで調整されました。

📌 7月中旬:FRB政策への思惑と中東情勢の不透明化
・7月16日、トランプ大統領がFRB議長の解任を示唆との報道で市場が一時混乱。
金価格は一時上昇するも、本人がすぐに否定し反落へ。
・7月18日、中東やウクライナ情勢などの地政学リスクが再燃。
加えて米ドルがやや軟化したことで、安全資産としての金需要が高まり、金価格は約0.4%上昇しました。

📌 7月下旬:米中・米EUの通商交渉と市場の反応
・7月22日、米中の貿易交渉期限をめぐって協議が始まると報じられました。
一部では「合意に至らなければ追加関税の可能性も」との見方が広がり、金相場が5週間ぶりの高値(約3,429ドル/oz)を記録。
・7月29日、米中摩擦の緊張がやや和らぎ、ドルが強含んだ影響で金価格は調整。
3週間ぶりの安値水準に下落しました。

7月は、世界経済や通商交渉の進展、地政学リスクの強弱が交錯する中で、
一時的に金価格が押し上げられる局面と調整局面が交互に訪れた月でした。
これらのニュースは、金相場の短期的な値動きに大きな影響を与える「材料」として強く意識されたといえるでしょう。

急騰・急落の背景を探る:注目の4日間

ここでは、7月の金相場で1日150円以上の価格変動があった4日間を取り上げ、
その前後の動きと背景を詳しく解説します。

🔹 7月8日:+214円の上昇(7/7 → 7/8)
・7月7日:16,863円/g
・7月8日:17,077円/g(+214円)
市場はやや軟調な米ドルと中東情勢への警戒感に反応。
前週末の米経済指標が停滞し、「利下げが現実味を帯びる」との見方から、安全資産としての金が買われました。

🔹 7月14日:+325円の大幅上昇(7/11 → 7/14)
・7月11日:17,093円/g
・7月14日:17,418円/g(+325円)
FRB人事への懸念や中国経済の不安により、「世界経済の減速懸念」が再燃。
ドル安も重なり、金が大きく買われる展開に。

🔹 7月22日:+171円の上昇(7/18 → 7/22)
・7月18日:17,434円/g
・7月22日:17,605円/g(+171円)
米中交渉の不透明感がリスク回避ムードを強め、
ドル建て・円建てともに金価格が上昇しました。

🔹 7月24日:−246円の急落(7/23 → 7/24)
・7月23日:17,683円/g
・7月24日:17,437円/g(−246円)
高値更新後の反落。米中交渉進展報道に市場が楽観視し、
短期筋の利益確定売りも重なり、7月最大の下げ幅となりました。

 

【総括】7月は“円安主導”の相場上昇だった

7月の金相場は、月初から月末にかけて約560円/gの上昇を記録し、
国内価格は高値圏での推移が続きました。

その背景をドル建て価格と比較しながら見ていくと、金の価値(ドル建て)はほぼ横ばいでした。

一方で、為替相場の円安進行(約3.2%)が、円建ての金価格上昇を強く後押ししていたことがわかります。

また、月内には

・米雇用統計やFRB人事に関する報道、

・米中の通商交渉、

・中東情勢の不透明化、
といった地政学・経済ニュースが短期的な変動を引き起こし、最大で1日325円の値動きが観測された日もありました。

このように、7月は為替主導+短期的なリスク要因の影響が色濃く出た月であり、
今後もこうした複合的な要因の動きを注視する必要があるでしょう。

参照・出典