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カドヤ質店からのお知らせ

なぜ金相場は世界情勢に左右されるのか?~戦争・経済・政策が価格に与える影響~

2025.08.21

はじめに

金相場は、短期的には為替や投機的な売買に左右されますが、より長いスパンで見ると世界情勢の変化が大きなカギを握っています。
地政学リスクや国際金融政策などが複雑に絡み合い、投資家の心理を揺さぶるからです。

これまでのコラムでは「円安と金価格の関係」や「金相場の基礎」について解説してきましたが、今回は一歩踏み込み、世界情勢が金価格に与える主要な要因を整理しながら、その代表的な事例を見ていきます。

世界情勢と金相場を結びつける3つの視点

金相場は多様な要因で動きますが、その中でも世界情勢と直結する要素として特に意識されるのが次の3つです。

① 地政学リスク(戦争・紛争・政治不安)
戦争や地域紛争、政情不安が高まると、市場は「安全資産」への逃避を強めます。
その代表格が金であり、買いが集中することで価格は上昇しやすくなります。
逆に停戦や和平合意、緊張緩和のニュースが出ると、金への資金流入は弱まり、相場が調整する動きも見られます。

② 主要国の金融政策・金利
金融政策は自国経済の要因だけではなく、世界経済全体の動向も表しています。
たとえば米国FRBの利下げ局面では「景気減速への懸念」が背景にあることが多く、その不安心理から金が買われやすくなります。
逆に利上げ局面では「インフレ警戒」や「ドル高」につながり、金の魅力が相対的に低下します。

③ 国際的な経済摩擦や制裁
米中摩擦や経済制裁、貿易戦争などの対立も金相場を動かす要因です。
これらは通貨や株式市場の不安定さを増幅させ、投資資金が金にシフトするきっかけとなります。
一方で交渉進展や制裁解除といった「安定へのシグナル」が出れば、金需要は一時的に落ち着きを取り戻します。

このように、金相場は単なる需給や物価変動ではなく、世界情勢そのものに敏感に反応する市場であることがわかります。
次章では、これらの視点を踏まえて「実際の歴史的事例」を取り上げ、金相場がどう動いたのかを具体的に見ていきましょう。

歴史的事例から見る金相場の動き

ここでは、実際に世界情勢の大きな変化が金相場に直結した代表的な事例を見ていきます。
それぞれの出来事が、どのように金価格を動かしたのかを振り返ってみましょう。

① 2008年 リーマンショックと世界金融危機
2008年秋、米大手投資銀行リーマン・ブラザーズの破綻を契機に、世界は深刻な金融危機に直面しました。
株式市場が急落する中で「資産の避難先」として金が選ばれ、一時的に価格が急騰。
その後も景気の不透明感が長く続いたことで、金相場は中長期的な上昇トレンドに入りました。

② 2020年 コロナ禍と世界経済の混乱
新型コロナウイルスの感染拡大により、各国で経済活動が停滞。
金融市場が大きく揺れる中、安全資産として金が強く買われました。
その結果、2020年8月には金価格が史上最高値を更新。
「不安定な世界情勢=金価格上昇」という典型的な動きが見られました。

③ 2022年以降 ロシア・ウクライナ戦争と地政学リスク
ロシアによるウクライナ侵攻は、エネルギー価格やインフレを加速させただけでなく、金融市場全体に大きな不安を与えました。
このタイミングでも金は「有事の資産」として再評価され、相場は上昇基調に。
ただし、その後は各国の金融引き締め政策や為替の動きによって調整局面も見られました。

これらの事例からわかるのは、金相場は常に「不安」と「安心」の間で揺れ動く存在だということです。
不安が強まれば買われ、安心感が戻れば調整する。
その繰り返しの中で、長期的な相場も形作られてきました。

現在の世界情勢と今後の注目テーマ

ここまで歴史的な事例を見てきましたが、では今の世界情勢は金相場にどのような影響を与えているのでしょうか。
現在進行形のテーマをいくつか整理してみます。

① 中東情勢の緊張
中東では依然として不安定な状態が続いています。
特にイスラエル・イランの対立はエネルギー市場を通じて世界経済に影響を与える要因であり、緊張が高まると金価格は上昇しやすい傾向があります。

② 米中関係と通商摩擦
世界経済の二大国である米国と中国の関係悪化は、金融市場の不安要因です。
追加関税や輸出規制などが現実化すると、世界的にリスク回避姿勢が強まり、金相場が支えられるケースが考えられます。

③ インフレと金融政策の不透明感
欧米を中心にインフレが依然として高止まりしていることから、各国中央銀行は金融引き締めと景気への配慮の間で難しい判断を迫られています。
インフレ懸念が強まれば「実物資産」として金が選ばれる可能性が高まり、逆に利上げが長期化すると金利資産に資金が流れやすくなるため、金相場に下押し圧力がかかる場面も出てきます。

このように、金相場は常に「地政学リスク」「大国間の関係」「金融政策の不透明さ」といった世界情勢の影響を強く受けています。
今後もこれらの動きに注目しながら、金相場の行方を読み解いていく必要があるでしょう。

まとめ

金相場は一見すると為替や投資需要の変化で動いているように見えますが、その背後には必ずといっていいほど「世界情勢」が関わっています。

歴史的にも、戦争や金融危機、感染症の流行、各国の金融政策といった出来事が、短期的にも長期的にも金価格を大きく左右してきました。

そして現在もまた、

  • 中東情勢の緊張
  • 米中関係の不安定さ
  • インフレと金融政策の行方

といった不確実性が、金を「安全資産」としての地位に押し上げています。

つまり金相場を読み解く際には、単なる数字や為替の動きだけでなく、世界各国のニュースや政治経済の流れを意識することが不可欠です。

カドヤ質店でも、日々変化する相場を注視しながら、お客様に安心してご利用いただけるよう努めてまいります。
資産の一部として金を保有する方にとっても、売却やご融資を検討される方にとっても、今後の世界情勢は常に注目すべき要素となるでしょう。

次回のコラムでは、今回触れきれなかった中央銀行の動きと金相場の関係をテーマに取り上げます。
各国がなぜ金を大量に保有・購入しているのか、その背景と今後の影響を詳しく解説していきますので、ぜひご期待ください。

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