MENU

カドヤ質店からのお知らせ

2025年8月金相場レポート|FRB利下げ観測とトランプ要因で揺れた1か月

2025.09.01

はじめに

2025年8月の金相場は、月を通じて上昇と調整が交錯する展開となりました。
特にFRBの利下げ観測や、トランプ前大統領によるFRBへの介入懸念がありました。
さらに関税政策やロシアとの会談なども重なり、政治的な要因が注目された月だったといえます。

👉 過去の解説もあわせてお読みいただくと理解が深まります。

2025年7月の金相場解説コラム
2025年6月の金相場解説コラム

このコラムでは、実際の国内店頭金価格やドル建て相場のデータをもとに、
8月の値動きを振り返りながら、その背後にあるニュースや出来事を整理していきます。

円建て金価格と為替の推移

2025年8月の店頭金買取価格は、為替の大きな変動がない中でも上昇基調を示しました。 

8月1日の店頭買取価格は17,404円/gでスタートし、6日には17,521円/gまで上昇しました。
その後は調整を挟みながらも底堅く推移しました。
月末の29日には17,682円/gとなり、月全体でプラス圏の着地となりました。

一方で為替相場(ドル円)は、月初の150.80円から147円台前半へ円高方向に動きました。
その後、月末には148円台後半に戻す程度でとどまりました。
このように、為替に大きなトレンドは見られませんでした。

ドル建て金価格の推移

2025年8月のドル建て金価格は、月初の3,263ドル/oz(8月1日)から始まりました。
6日には3,358ドル/ozを記録しました。
その後も底堅く推移し、下旬には3,360ドル台後半まで伸びる場面がありました。
月末の29日には3,363ドル/ozで取引を終えています。

つまり、ドル建てで見ると8月の金価格は明確に上昇基調を示していました。

この動きは、前章で確認した円建ての上昇と同じ方向でした。
7月とは対照的に「為替要因ではなく国際相場そのものの上昇」が背景にあったことがわかります。

金相場に影響した8月のニュースまとめ

金相場に影響した8月のニュースまとめ

この章では、8月の金相場に影響を与えた主要なニュースを時系列で整理し、価格変動の背景を読み解いていきます。

📌 8月上旬:FRB利下げ観測の強まり

8月初旬には、9月の利下げ期待が市場で高まりました。ドルが軟化したことで金価格は上昇し、ドル建てでは3,350ドル台を回復しました。

📌 8月11日:トランプ氏の関税発言で市場が揺れる

8月11日には、一部報道で「スイス産金地金に高率関税」との見方が浮上しました。この影響で金先物は史上最高値を記録しました。
しかしその後、トランプ氏が「金に関税は適用しない」と否定したことで急落。不透明感が強まり、投資家心理を大きく揺さぶる結果となりました。

📌 8月13日:トランプ氏によるFRB介入懸念

8月13日には、トランプ前大統領がFRB理事リサ・クック氏を解任しました。FRBの独立性が脅かされるとの懸念からドル安が進行し、安全資産としての金需要が増加しました。
この影響で金ETFには一時的に5億ドル超の資金が流入し、市場の不安心理を反映した動きとなりました。

📌 8月15日:トランプ・プーチン会談

アラスカで行われた米ロ首脳会談は大きな注目を集めましたが、具体的な合意には至りませんでした。市場では事前に「和平期待」で一部の売りが出たものの、結果的に安全資産需要は維持。大きな政治イベントであっても、必ずしも金価格に直結しないことを示した事例となりました。

📌 8月下旬:ドル指数の反発と一時的な調整

8月25日前後にはドル指数が反発し、金価格は一時的に下落しました。ただし9月の利下げ期待が引き続き支えとなり、調整幅は限定的にとどまりました。

8月は、FRB利下げ観測による上昇基調を土台にしつつ、トランプ氏の動向(FRB介入・関税発言・プーチン会談)やドル指数の変動が相場を揺さぶった月でした。7月と比べても、政治要因の比重が一段と大きかった点が特徴的だったといえるでしょう。

相場が大きく動いた日を検証

ここでは、2025年8月の金相場で前日比100円以上の変動があった日を取り上げます。
それぞれの背景を整理していきましょう。

🔹 8月6日(火):+109円の上昇

8月5日(月):17,412円/g

8月6日(火):17,521円/g(+109円)

この日はFRBの利下げ観測が強まり、ドル安基調が鮮明になったことで金相場は上昇しました。
また、安全資産としての需要も意識され、円建て価格は高値を更新しました。

🔹 8月20日(火):−132円の下落

8月19日(月):17,353円/g

8月20日(火):17,221円/g(−132円)

この日はドル指数が反発し、ドルが強含みました。
その結果、金相場は大きく下落しました。
さらにジャクソンホール会合を前にFRB政策への不透明感が意識され、利下げ観測がやや後退しました。
投資家の一時的な利食い売りも加わり、8月最大の下げ幅を記録しました。

🔹 8月21日(水):+118円の反発

8月20日(火):17,221円/g

8月21日(水):17,339円/g(+118円)

前日の大幅下落を受け、押し目買いが優勢となり、その結果大きく反発しました。
市場ではFRB利下げ期待が依然として根強く、安全資産としての金需要は衰えていないことが示されました。

🔹 8月27日(水):+105円の上昇

8月26日(火):17,493円/g

8月27日(水):17,598円/g(+105円)

この日はドル安基調が続きました。
さらに投資家の買いが再び活発化しました。
国際相場の上昇を反映し、国内相場も大きく値を伸ばしました。

8月は、20日の大幅下落と21日の反発が特に目立ちました。
全体を通じて利下げ観測やドルの強弱に敏感に反応した1か月だったといえます。
7月ほど極端な乱高下はなかったものの、日単位で100円以上の値動きが繰り返され、投資家心理の揺れを映し出す展開でした。

まとめ

2025年8月の金相場は、FRB利下げ観測を背景に上昇基調を維持しました。
ただし政治要因によって上下に振れる場面が多い月でもありました。

前半はドル安の進行が追い風となり、ドル建て・円建てともに高値圏で推移しました。
一方でトランプ氏によるFRB介入や金への関税発言、さらにプーチン大統領との会談などが投資家心理を揺さぶりました。

8月20日の大幅下落と21日の反発は、ドルの強弱と利下げ期待が交錯した象徴的な動きです。
7月が「通商交渉や地政学要因」で変動したのに対し、8月は米国の金融政策とトランプ氏の発言・行動が主役となった点が特徴的でした。

総じて8月は、金相場が政治リスクに敏感に反応した月でした。
今後もFRB政策とトランプ政権の動向が、相場の方向性を左右する重要なテーマとなるでしょう。

出典

– NHK World「Trump, Putin hold summit in Alaska」(2025年8月16日)
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/news/20250816_N01/

– BBC News Japan「米FRBのリサ・クック理事をトランプ氏が解任」(2025年8月13日)
https://www.bbc.com/japanese/articles/c04rkz5e409o

– Reuters「Gold firms as dollar weakens, focus on Jackson Hole」(2025年8月20日)
https://www.reuters.com/world/china/gold-firms-dollar-weakens-focus-jackson-hole-2025-08-20/

– 田中貴金属工業「店頭金買取価格」
https://gold.tanaka.co.jp/commodity/souba/d-gold_recent.php