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2025年10月金相場レポート|史上最高値と過去最大下落が同月に発生

2025.11.04

はじめに

2025年10月の金相場は、史上最高値の更新と過去最大の下落という、対照的な動きが同じ月に起きた異例の展開となりました。
国内では円安が進む中で相場が一段と上昇。21日には1gあたり23,179円と過去最高値を記録しました。
しかしその翌日、22日にはわずか1日で1,540円の下落という歴史的な値動きを見せました。

この急騰と急落の背景には、為替の変動・国際金融政策・米中首脳会談などの政治的要因が複雑に絡み合っていました。
結果として、10月の金市場はまさに「安全資産需要」と「高値警戒」がせめぎ合う月となりました。

本コラムでは、実際の国内相場・海外相場・為替データをもとに、
10月の金相場がどのように動いたのか、そしてその背後で何が起きていたのかを詳しく解説していきます。

国内相場と為替の動き

まずは、10月の国内金相場の推移を見てみましょう。  

10月の国内金相場は、月初の20,133円/g(10月1日)で始まり、
中旬にかけて一気に上昇。10月21日には23,179円/gと過去最高値を更新しました。
グラフでも、10月中旬までの急伸がはっきりと確認できます。

しかしその翌日、10月22日には−1,540円という過去最大の下落が発生しました。
前日までの勢いから一転して急落したことで、市場には高値警戒感が一気に広がりました。
それでも下旬以降は再び持ち直し、月末の10月31日には21,860円/gと高値圏を維持しています。

このように、10月の国内相場は「急騰と急落が同居した異例の1か月」でありながらも、
結果的には全体として高値水準を保つ強い相場だったといえます。

続いて、同期間の為替(ドル/円)の推移です。

為替は月初の148円台から始まり、10月を通して円安傾向が続きました。
中旬以降には153円台後半まで上昇し、月末には153.9円を記録しています。
>>ドル高・円安が進んだことで、海外相場が調整しても国内価格が大きく崩れにくい状況が続きました。

海外相場(ドル建て)の動きと国内相場との比較

10月の海外金相場は、月初の3,873ドル/oz(10月1日)で始まりました。
>>その後、リスク回避の動きが強まったことで上昇が続き、10月8日には史上初の4,000ドルを突破しました。
中旬にはFRBの利下げ観測を背景に、安全資産としての需要がさらに拡大。
グラフを見ても、上旬から中旬にかけての上昇が際立っていることがわかります。

一方で、月の後半には一時的な調整も見られました。
特に10月22日にはドル高が進行し、海外市場でも金は反落しました。
その後は再び買い戻しが入り、月末には4,015ドル/ozで高値圏を維持しています。

このグラフでは、左軸が海外相場(ドル/oz)、右軸が国内相場(円/g)を示しています。
両者を重ねて見ると、全体の値動きの形は似ているものの、国内相場の方が円安の影響でより強く押し上げられていることがわかります。

海外では一時的に反落があった場面でも、国内では円安が進んだことで価格が下がりにくく、
結果的に「海外が下げても国内は高止まり」という状態が続きました。

このように、10月の海外相場は史上高値圏を維持しながら上下に振れる展開を見せ、
国内相場では為替のサポートによってその上昇幅がより大きく現れました。
つまり、10月の金相場を特徴づけたのは、ドル高と円安が同時に進行した“強い二重効果”だったといえます。

金相場に影響した10月のニュースまとめ

この章では、10月の金相場に影響を与えた主要なニュースを、時系列で振り返りながら整理していきます。
10月は政治・経済の動きが非常に多く、金相場がその影響を強く受けた月でした。

📌 上旬:米政府機関の閉鎖と史上初の4,000ドル突破

・10月1日:米政府機関の一部閉鎖開始(予算不成立)

政府機関の閉鎖を受けて市場には不安が広がり、リスク回避の動きが強まりました。これにより、安全資産としての金が買われ、相場は上昇基調に入りました。

・10月8日:金価格、史上初の4,000ドル突破(海外市場)

不透明な政治情勢とドルの一時的な弱含みが重なり、海外相場は節目となる4,000ドルを突破。国内相場でも連動して上昇が続きました。

📌 中旬:IMF見通しとFRB理事の発言で「緩和期待」広がる

・10月14日:IMF世界経済見通し発表(成長率小幅上方修正)

景気見通しが改善する一方で、地政学リスクや金融緩和の方向性に注目が集まりました。市場では「金利引き下げが現実味を帯びる」との見方が広がり、金は買われやすい展開に。

・10月16日:FRBウォラー理事・ミラン理事が利下げ支持を表明

FRB内部での“早期利下げ論”が浮上し、ドル建て相場が再び上昇。この時期に金価格は一段高となり、10月21日の過去最高値(23,179円/g)に向けて上昇しました。

📌 下旬:米中会談と政策決定で相場が急変

・10月23日:米政府、対中報復・輸出規制を検討

米中関係の緊張が再燃し、地政学リスクを背景に金が一時的に買われました。

・10月26日:タイ・カンボジア和平合意(地政学リスク緩和)

一方で、東南アジア地域では緊張緩和の動きが見られ、一時的に金の買い需要が弱まる場面もありました。

・10月27日:日米首脳会談(トランプ氏来日)

通商交渉の進展期待が高まり、市場心理がややリスクオンに傾きました。

・10月29日:米中首脳会談(6年ぶり)・FRB利下げ決定(Reuters)

両首脳会談で緊張が和らぎ、同日にFRBが利下げを発表。しかし、12月の追加利下げを否定する発言が出たことで市場が混乱。金相場は21日以降の反落を経て調整局面へと移行しました。

・10月30日:レアアース規制延期・関税引き下げ(時事通信)

経済リスクの後退が意識され、月末には金相場も落ち着きを取り戻しました。

10月は、政治・金融・地政学的要因が連鎖的に金相場を揺さぶった月でした。上旬はリスク回避による買い、下旬はリスク緩和による売りが入り、まさに「安全資産としての金の存在感」が際立った1か月といえるでしょう。

相場が大きく動いた5日間を検証

ここでは、10月の金相場で1日あたり150円以上の大きな価格変動があった日のうち、
特に注目すべき5日間を取り上げ、その背景と値動きを整理していきます。

🔹 10月8日(火):+322円の上昇(10/7 → 10/8)

10月7日(月):20,697円/g

10月8日(火):21,019円/g(+322円)

海外市場で金が史上初の4,000ドルを突破。
国内相場も円安を通じて連動する形で上昇しました。
米政府機関の閉鎖による政治リスクが意識され、安全資産需要が強まった一日です。

🔹 10月14日(月):+819円の急騰(10/11 → 10/14)

10月11日(金):21,341円/g

10月14日(月):22,160円/g(+819円)

FRB理事の利下げ支持発言やIMFの世界経済見通しを受けて、
海外市場では緩和期待が広がり、金価格が大きく上昇。
この動きに国内相場も歩調を合わせ、月内最大の上げ幅を記録しました。

🔹 10月17日(金):+658円の上昇(10/16 → 10/17)

10月16日(木):22,097円/g

10月17日(金):22,755円/g(+658円)

中東情勢の不安定化やFRBのハト派的姿勢が意識され、
世界的にリスク回避の流れが強まりました。
海外・国内ともに買いが集まり、金相場は一段高に。
この上昇が、翌週の史上最高値更新へとつながりました。

🔹 10月21日(月):+696円の上昇(10/18 → 10/21)

10月18日(金):22,483円/g

10月21日(月):23,179円/g(+696円)

FRB利下げ観測やドル安基調、円安進行が重なり、国内外で金相場が同時に上昇しました。
この日、国内では1gあたり23,179円の史上最高値を更新。
高値圏での取引が続く中、投資家心理がさらに強気に傾きました。

🔹 10月22日(火):−1,540円の急落(10/21 → 10/22)

10月21日(月):23,179円/g

10月22日(火):21,639円/g(−1,540円)

前日の最高値更新の反動で、この日は**−1,540円**と過去最大の下落幅を記録しました。
高値圏での過熱感が強まる中、短期的な利益確定の売りが集中しました。
その結果、国内外の相場がそろって調整局面に入りました。
>>急騰後の一服とも言える値動きであり、勢いをつけて上昇していた流れがいったん落ち着きを取り戻した形です。
また、日経新聞によればドル建てでは過去10年で最大(−5.5%)の下落率となりました。

10月の金相場は、これらの5日間に代表されるように、
月内で大きな値動きが相次いだことが特徴でした。

10月の値動きを振り返って

2025年10月の金相場は、史上最高値と過去最大下落が同時に起きた異例の月でした。
月初から中旬にかけては、海外市場での4,000ドル突破やFRB理事の発言をきっかけに上昇が続き、21日にはついに23,179円/gの史上最高値を記録しました。

しかしその翌日には、短期的な過熱感から−1,540円(過去最大の下落幅)という急激な調整が発生。市場の勢いが一時的に冷やされる形となりました。

とはいえ、月末の時点でも21,000円台後半を維持しており、全体としては依然として高水準を保っています。海外情勢や金融政策への関心が高まる中で、金は引き続き「安全資産」としての存在感を示した1か月でした。

10月の相場は、高値更新と急落の両方を経験した“節目の月”として、今後を見通す上でも重要な局面だったといえるでしょう。

参照・出典

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