2025.06.24
第1回ではコロナショックによる価格の急落、第2回では合成ダイヤモンドの台頭がもたらした構造変化について取り上げました。
今回は、現在進行形で市場に大きな影響を与えているアメリカの関税政策に焦点を当て、ダイヤモンド価格との関係を読み解いていきます。
2024年末、アメリカ政府は中国製品への追加関税を再強化する方針を発表しました。これは「通商法301条」に基づくもので、ダイヤモンド製品も対象に含まれています。
ただし、関税の一部には2025年7月9日までの猶予措置が設けられており、現在はその猶予期間中にあります。しかし市場はすでに反応を示しており、在庫や輸送ルートの見直しが進むなか、相場にも下押し圧力がかかっています。
アメリカは世界最大級のダイヤモンド消費国であり、同国の関税政策は国際市場全体に大きな影響を及ぼします。
関税発動によって輸入コストが上昇すると、小売価格に転嫁しきれない分だけ業者の利益が圧迫されます。
その結果、流通業者は在庫処分を早める傾向になり、卸売市場では値下げ圧力が高まります。さらに、中国以外にも影響は波及しています。
例えば、インドは世界最大の研磨拠点であり、UAE(ドバイ)は国際的な取引ハブ、ベルギーはダイヤの流通と評価機関の拠点として知られています。これらの国々でもアメリカ市場への輸出の不透明化が進み、流通全体の動きが鈍くなっています。
以下は、日本国内の業者市場で実際に取引された、Gカラー/VS1/Goodカット/約0.3ctのダイヤモンド価格推移です。
年月 | カラット | カラー | クラリティ | カット | 金額(円) |
---|---|---|---|---|---|
2024年4月 | 0.309 | G | VS1 | G | 36,000円 |
2025年4月 | 0.308 | G | VS1 | G | 25,000円 |
2025年5月 | 0.305 | G | VS1 | G | 24,000円 |
わずか1年余りで価格は1/3近く下落しています。
要因として合成ダイヤモンドや円高傾向の影響も考えられますが、関税による価格調整の影響が出ていることが見て取れます。
2025年のダイヤモンド市場は、コロナ禍の混乱、合成ダイヤの普及、そしてアメリカの関税政策という複合的な要因から大きな影響を受けています。
価格変動は今後も続くと見られますが、その背後には国際経済の不安定さが潜んでいます。
次回(最終回・第4回)は、さらにもう一つのカギとなる要素——「中国経済の低迷とダイヤモンド相場への影響」について取り上げ、ダイヤモンド相場の今後を展望します。